血液浄化センター

在宅透析部門

患者さんの“自分らしい生活”を支えるために

日本では約97%の方が施設で血液透析を受けています。施設透析も多くの利点がありますが、一方で、在宅で透析を行うことで「仕事を続けたい」「家族との時間を大切にしたい」「生活リズムを崩したくない」といった想いを実現できる場合があります。

当院では、患者さんの生活や価値観を尊重し、在宅血液透析(HHD)や腹膜透析(PD)といった“在宅でできる透析”を積極的にご提案しています。

在宅血液透析(Home Hemodialysis:HHD)

当院では、「自分らしい生活を大切にしながら透析を続けたい」という患者さんの想いに応えるため、在宅で行う血液透析(HHD)の導入とサポートを行っています。

HHDは、ご自宅で好きな時間帯に透析を行うことができ、時間的拘束の大幅な軽減が期待できる治療法です。週回数を増やしたり、長時間透析を行えることから、生活の質(QOL)の向上や社会復帰に役立つ選択肢として注目されています。



HHDとは?

在宅血液透析は、自宅に透析機器を設置し、患者さんご自身またはご家族の介助で行う血液透析です。

特徴

・自宅で治療ができ、通院回数を大きく減らせる
・自分の生活リズムに合わせて透析時間を調整しやすい
・頻回透析や長時間透析により、体調の安定が期待できる

一方で、HHDには介助者の協力や自宅環境の整備が必要であり、導入前の準備が重要となります。



導入前の流れ

HHD導入には、以下のステップを経て、安全に在宅で治療が行えるかどうかを確認します。

① 導入希望面談

・HHDについて医師・スタッフが説明
・患者さんの希望、介助者の同意、生活環境などを確認
・適応の可否を主治医が総合的に判断

② 自宅の環境調査(下見訪問)

・治療に必要なスペース、電源、給排水、資材保管場所を確認
・特に排水設備は重要で、公共下水道か浄化槽かで必要工事が異なる
・工事費用が必要になる場合は費用・手続きも含め説明

③ 同意・契約

・HHDでの注意点、緊急時対応、透析条件などを確認
・患者さん・介助者に十分理解していただいた上で契約



導入教育 ~HHD開始まで

当院では、HHDのトレーニングを段階的に行い、患者さんと介助者の双方が安心して自宅で治療できるよう支援します。

トレーニング内容の例

・バスキュラーアクセス(シャント)の自己穿刺訓練
・機械操作、透析液交換、トラブル対応
・停電時などの緊急対応
・介助者向けの補助方法(穿刺補助、血栓除去など)

指導者以外のスタッフによる最終チェックも行い、技術の安定を確認します。

環境整備と装置搬入

・必要な電源・ブレーカー増設
・給排水設備の整備
・資材保管スペースの確保
・問題がなければ透析装置を搬入



HHD導入後の管理

導入後も、患者さんとご家族が安心して続けられるよう多面的にサポートします。

① 記録表の送付

・毎回の透析内容を記録し、メールまたはFAXで送付
・医療スタッフが毎日確認し、必要なときに連絡

② 定期外来

・月1回の診察で体調、介助者の負担、シャントの状態を確認
・血液検査や記録表を基に透析条件を見直し
・半年に1回、病院で手技確認・透析効率評価を実施

③ 訪問メンテナンス

・半年に1回、装置のメンテナンスや環境確認
・アラーム履歴や透析液清浄化をメーカーとともにチェック

④ 緊急時の対応

・身体の異常や装置トラブル時は病院へ連絡
・必要に応じて緊急訪問や救急要請
・「迷ったら中止する」シンプルで確実な判断基準を徹底

書籍名:腎代替療法選択支援外来 実践ガイド
著者名:埼玉医科大学総合医療センター 佐々木裕介,奥山正仁
監 修:埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科教授, 血液浄化センター長 小川智也
出版社:日本医事新報社
発行年:2024年
ページ:P38-P44


腹膜透析(Peritoneal Dialysis:PD)

当院では、腹膜透析(PD)を「自宅でできる透析」として、患者さんの生活を大切にしながら続けられるよう支援しています。導入から長期管理まで、腎臓内科医と多職種チームが一貫してサポートします。



腹膜透析とは?

腹膜透析は、お腹の中の「腹膜」を利用して老廃物や余分な水分を取り除く在宅透析の一種です。

特徴

・自宅で治療でき、通院回数が少ない
・生活リズムに合わせた治療が可能
・仕事や家庭生活との両立をしやすい
・自分らしい生活を大切にしたい方に適した療法



当院の特徴 ― 腎臓内科医によるテンコフカテーテル挿入

・腹膜カテーテルを腎臓内科医が直接挿入
・患者さんの病態を理解したうえで安全な導入が可能
・導入後も腎臓内科医が継続フォローし、合併症を早期発見



多職種チームによるサポート

HHDと同様、PDも在宅治療のため、多職種によるサポートが欠かせません。

● 看護師

・手技指導、感染予防のアドバイス
・電話・外来での継続フォロー

● 栄養士

・生活に合った無理のない食事指導
・合併症予防のための栄養管理

● 臨床工学技士

・機器・物品の管理
・週1回血液透析(PD+HD併用)の技術サポート



腹膜透析+週1回血液透析(PD+HD)という選択肢

腹膜透析のみでは除水不足や腹膜炎などの問題が起こる場合があります。
当院では、腹膜透析を少しでも長く続けられるよう、「腹膜透析+週1回血液透析」 の併用療法を導入しています。

メリット

・不足分の老廃物・水分をHDで補える
・合併症の早期発見につながる
・生活はほぼ在宅中心のまま維持できる



患者さんの生活に寄り添う透析を

・仕事を続けたい
・家族との時間を大切にしたい
・自宅で落ち着いて治療したい

そんな患者さんの想いに合わせ、HHD・PDいずれも最適な療法をご提案します。



ご相談はいつでもお気軽に

在宅血液透析(HHD)・腹膜透析(PD)の双方について、当院では専門性とサポート体制を整えています。
治療選択に迷われる方も、ぜひご相談ください。患者さんとご家族を全力で支えます。