血液浄化センター
腎移植部門
腎移植部門のご紹介
―腎臓の機能を取り戻し、より自由な生活を目指す治療―
腎臓の働きが大きく低下すると、血液透析や腹膜透析が必要になりますが、もう一つの重要な選択肢として 「腎移植」 があります。腎移植は、「新しい腎臓」を体に移植し、腎臓の働きを再び取り戻す根本的治療です。
当院では、臓器移植センターと連携し、献腎移植・生体腎移植の双方を積極的に実施しています。また、移植前後の腎代替療法外来や献腎移植の登録支援など、血液浄化センターが中心となって患者さんのサポート体制を整えています。
腎移植には2つの種類があります
腎移植には、「献腎移植」と「生体腎移植」があります。
どちらも優れた治療ですが、提供元と待機期間、移植後の経過などに違いがあります。
1. 献腎移植(けんじんいしょく)
脳死または心停止後のドナーから提供される腎臓を移植する方法です。
日本では、日本臓器移植ネットワークが腎臓の提供と待機リストを全国で一元管理しており、当院も登録・情報更新の支援を行っています。
▼ 特徴
・腎臓提供者は、面識のない第三者
・年齢・血液型等の条件に基づき、公平なルールで配分
・待機期間は一般的に 10〜15年 程度
(※地域や年齢、血液型などによって大きく異なります)
▼ 生着率(一般的な国内データ)
移植学会・移植ネットワークの公開データから
・1年生着率:約90%前後
・5年生着率:約75〜80%
・10年生着率:約60〜70%
献腎移植は待機期間が長くなる傾向がありますが、長期的な成績は世界標準と同等の良好な結果が示されています。
2. 生体腎移植(せいたいじんいしょく)
健康な家族(親、兄弟姉妹、子、配偶者など)から腎臓をひとつ提供してもらう移植です。
▼ 特徴
・腎臓の状態が良い提供者から移植できる
・手術日を計画的に決められる
・献腎移植に比べ、待機期間が短い(数ヶ月〜1年以内のことが多い)
▼ 生着率(一般的な国内データ)
・1年生着率:95〜98%
・5年生着率:85〜90%前後
・10年生着率:75〜85%前後
生体腎移植は、腎機能がよく保たれやすく、成績が良いことが多いとされています。
当院の腎移植医療の特長
1. 臓器移植センターとの密な連携
当院では、腎移植専門医・移植コーディネーター・腎臓内科医・泌尿器科医・看護師・薬剤師・臨床工学技士がチームをつくり、
移植前の準備 → 手術 → 移植後のフォロー
まで一貫してサポートします。
2. 献腎移植の登録支援
血液浄化センターでは、
・日本臓器移植ネットワークへの登録
・必要書類の作成
・定期的な更新
・待機中の患者さんの状態管理
などを行い、患者さんがスムーズに移植を受けられるよう支援しています。
献腎移植は条件に応じて優先順位が変わるため、常に最新の情報管理が必要です。
当院ではこの業務を専門のスタッフが丁寧に行っています。
3. 腎移植前後の腎代替療法外来
移植を受ける前には、現行の透析を安全に続けながら、
・体調管理
・感染症予防
・ワクチン接種
・手術に向けた栄養・体力管理
などをサポートする専門外来を設置しています。
移植後は、
・拒絶反応のチェック
・免疫抑制薬の調整
・感染症の予防
・腎臓の働きの評価
など、継続的なフォローが不可欠です。
血液浄化センターと移植チームが連携して、手術後も安心して生活できるよう長期的な支援体制を整えています。
腎移植のメリットと生活上のポイント
▼ 主なメリット
・透析を必要としない生活に戻れる
・食事・飲水の制限が大幅に軽減
・体調が安定しやすい
・仕事・社会活動への復帰がしやすい
・長期的な生命予後が改善する可能性がある
長期的な生命予後が改善する可能性がある
多くの患者さんが「体が軽くなった」「生活が自由になった」と感じています。
▼ 注意点(移植後)
・毎日免疫抑制薬を飲み続ける必要がある
・感染予防の工夫が必要
・血液検査・通院を定期的に行う必要がある
安全に腎臓を守るために、医療者と一緒に長期的に取り組んでいく治療です。
最後に ― 腎移植は「希望ある選択肢」のひとつです
腎移植は、透析治療に比べて大きく生活の質が向上し、長期的な予後が改善する可能性のある治療方法です。
献腎移植・生体腎移植のどちらも、患者さん一人ひとりの状況に合わせて選択できます。