血液浄化センター

導入支援部門

腎代替療法をわかりやすく説明します

―患者さんとご家族の「納得できる治療選択」を支えるために―

慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)と診断される方は年々増え続けています。高血圧や糖尿病の患者さんの増加、人口の高齢化などが背景にあり、現在、日本では1,300万人以上が慢性腎臓病を抱えていると言われています。その多くの方が自覚症状のないまま進行するため、気付いたときには腎臓の働きが大きく低下して、体の中の老廃物や余分な水分を自力で十分に排出できなくなると、腎代替療法を検討する必要性が生じることも少なくありません。腎代替療法には以下の3つがあり、それぞれに特徴があります。

  1. 血液透析(HD)・・・施設血液透析、在宅血液透析
  2. 腹膜透析(PD)・・・在宅腹膜透析
  3. 腎移植・・・献腎移植、生体腎移植

どれも「命を支える治療」ですが、治療方法や生活への影響は大きく異なります。そのため、患者さん自身が治療を理解し、生活や仕事、ご家族との関わりなどを考えながら、納得のいく選択ができることが非常に大切です。



なぜ早い説明が必要なのでしょうか?

腎臓の働きは少しずつ低下しますが、一度失われた機能は元に戻ることが難しいと言われています。腎代替療法が必要になるタイミングは患者さんごとに異なりますが、「突然始める治療」ではなく、前もって理解したうえで選択していただく治療です。

腎代替療法を始める直前は、息苦しさ、むくみ、食欲低下など体調不良が重なり、不安も大きくなります。その時に初めて治療方法を聞いても、充分に比較したり、納得して選ぶことが難しくなることがあります。

だからこそ、できるだけ早い段階から説明を受け、治療について考え始めることが大切です。



当院の「腎代替療法選択外来」について

当院では、慢性腎臓病と診断された患者さんとご家族に向けて、腎代替療法の内容をわかりやすく説明し、納得して治療を選ぶための外来を行っています。

▼ 外来の目的

・腎代替療法について正しく理解していただく
・ご本人の生活・仕事・価値観に合った治療選択をサポートする
・不安や疑問を気軽に相談できる場をつくる
・前もって透析準備(シャント作製や腹膜透析カテーテル挿入など)の必要性をお伝えする

腎臓病の治療は、患者さんやご家族の協力が欠かせません。当院では、医師だけでなく、看護師、臨床工学技士、栄養士、ソーシャルワーカーなど多くの職種が連携して、チームとして患者さんの意思決定を支えています。また、全国に先駆けて、公認心理師も同席して、精神的な側面からもサポートできるように取り組んでおります。



説明外来ではどのようなことを行うのでしょうか?

外来では、以下の内容を個別の状況に合わせて丁寧にお話しします。

● 腎臓の働きと現在の状態

血液検査の数値をわかりやすく示し、病気の進行度を一緒に確認します。

● 腎代替療法の3つの選択肢の詳しい説明

・血液透析
 通院が必要な治療、在宅で行う方法(在宅血液透析)もあります。
・腹膜透析
 お腹の腹膜を使った自宅で行う治療。
・腎移植
 生体腎移植・献腎移植の流れをご説明します。

パンフレットや実際の道具を使いながら、治療の仕組みだけでなく、生活の変化、メリット・デメリットも具体的にお話しします。

● 生活や仕事に合わせた治療の相談

患者さんの生活スタイル(仕事・家庭・趣味など)をお伺いし、どの治療が適しているか一緒に考えます。

● 不安や疑問の相談

「透析が怖い」「仕事は続けられるのか」「家族に負担がかかるのでは」など、どんな小さなことでもご相談いただけます。



自分に合った治療を選ぶために

腎代替療法は、長く続く治療です。どれが一番良いという絶対的な答えはなく、その人の生活や大切にしていることによってベストな選択は変わります。

  • 仕事を続けたい
  • 自宅で治療したい
  • 体への負担を少なくしたい
  • 家族に迷惑をかけたくない

こうした患者さんの想いを丁寧に伺いながら、最適な治療を一緒に探していきます。



当院の腎代替療法導入支援を希望される際は

普段から慢性腎臓病の診療を受けられている主治医にご相談していただき、当院の腎・高血圧内科に【腎代替療法導入支援希望】と記載の上、初診でご紹介いただきたく存じます。予約等の受付方法

今までの診療経過をご確認し、必要な状況と判断された際には、腎代替療法選択外来の予約を取得致します。

腎代替療法導入支援の前に、腎臓病全体の知識取得を必要と判断された際には、当院主催の【じんぞう病教室】を行っており、腎臓病とはから始まり、検査データの見方やどのような日常の取り組みをすればいいか、どのような食事療法がいいか、もし腎代替療法を行うことになればどのような治療があるか、どのような社会支援があるのかなどを学ぶ集団教室をご紹介いたします。



最後に

慢性腎臓病と診断されると、不安や疑問がたくさん生まれると思います。しかし、決して一人で抱える必要はありません。当院の腎代替療法説明外来は、患者さんとご家族が安心して治療を選べるよう、寄り添いながらサポートするための外来です。

腎臓の病気と向き合いながら「その人らしい生活」をできるだけ長く続けられるように、私たち医療スタッフが全力で支えてまいります。どうぞお気軽にご相談ください。