血液浄化センター
特殊血液浄化部門
特殊血液浄化療法について
当院では、通常の血液透析だけでなく、病気の種類や重症度に応じて多様な血液浄化療法を行っています。これらは大きく ①急性血液浄化療法、②アフェレシス療法、③その他の血液浄化療法 に分類され、患者さん一人ひとりの状態に合わせて最適な治療法を選択します。
これらの治療は、多くが難治性疾患や重症患者さんに対して行われます。そのため、各診療科の主治医から血液浄化センターに治療依頼が入り、病態に合わせてどの血液浄化療法が最も適切かを医師・看護師・臨床工学技士が協議しながら決定します。 血液浄化センターで実施できない治療については、ICUをはじめとする集中治療室と連携し、最適な場所で安全に治療を行います。
血液浄化療法の多くは、バスキュラーアクセス(血管アクセス)と呼ばれる太めのカテーテルを挿入し、必要な血液流量を確保して行うことが原則です。治療前には、患者さんの状態に応じて安全にカテーテルを留置する準備を整え、慎重な管理のもとで治療を進めます。
1.急性血液浄化療法
急性血液浄化療法は、急性腎障害(AKI) や 敗血症 など、急激に全身状態が悪化した際に行う治療です。腎臓の働きが低下したり、体内の炎症が悪化したりすると、血液中に老廃物や余分な水分、炎症物質が蓄積し、命に関わる状態になることがあります。これらを取り除き、体のバランスを整える目的で急性血液浄化が行われます。
●どのようなときに必要となるか
・急性腎障害で尿がほとんど出ない
・体内の水が増え、呼吸が苦しい
・血中カリウムが危険なレベルに上昇
・敗血症で大量の炎症物質が放出され、循環が不安定
・薬物中毒や毒素を迅速に除去する必要がある場合
これらは重症な状態であり、多くはICUや救命救急治療室で管理されます。
●どのような治療法があるか
・持続的血液濾過透析(CHDF)
24時間かけてゆっくり浄化する方法で、血圧が不安定な患者さんに適しています。
・血液透析(HD)による持続的低効率透析(SLED)
短時間で効率よく老廃物を取り除く方法。
・吸着療法(エンドトキシン吸着・サイトカイン吸着など)
敗血症で増えすぎた炎症物質を選択的に除去。
これらは、主治医と血液浄化専門チームが協議し、患者さんに最も適した方法を選択します。
2.アフェレシス療法
アフェレシス療法は、血液や血漿の中に含まれる 自己抗体、免疫複合体、異常タンパク質、脂質 など、病気の原因となる物質を取り除く治療です。いろいろな診療科にまたがり、幅広い疾患に対して行われます。治療にあたっては、原疾患を担当する主治医と、血液浄化センターの医師・スタッフが相談し、治療の必要性やタイミングを慎重に判断します。
●主なアフェレシスの種類
・血漿交換療法(PE)
血漿を入れ替えて病因物質を除去。神経疾患、免疫疾患、重症感染症などに有効。
・血漿吸着療法(PA)
血漿中の自己抗体などを選択的に吸着して取り除き、血漿自体は体に戻します。
・LDL吸着療法(LDL-A)
悪玉コレステロール(LDL)を取り除き、家族性高コレステロール血症などに適応。
・白血球除去療法(LCAP)・顆粒球吸着療法(GCAP)
炎症に関わる白血球を除去し、潰瘍性大腸炎などに使用されます。
3.その他の特殊血液浄化療法
●腹水濃縮再静注法(CART)
肝硬変や悪性腫瘍などにより腹水が大量に貯留した場合に行う治療です。
腹水を取り出して不純物を除去し、タンパク質を濃縮して体に戻すため、栄養低下を防ぎながら腹部膨満や呼吸苦を改善できます。
●その他の浄化療法
中毒物質除去を目的とした特殊フィルター治療など、病態に応じて多様な治療法があります。
多診療科・多職種による連携体制
特殊血液浄化療法は、患者さんの全身状態を踏まえ、原疾患を担当する主治医、血液浄化センター、集中治療室、看護師、臨床工学技士 が連携して治療を進めます。
・主治医から血液浄化センターに依頼
・病態に応じた治療法を多職種で協議
・血液浄化センターまたはICUで治療を分担
・バスキュラーアクセス管理を含めた安全対策を徹底
患者さんやご家族に丁寧に説明し、納得いただいた上で治療を開始します。
最後に
特殊血液浄化療法は、重症病態や難治性疾患に対して大きな力を発揮する治療です。どの治療を選ぶかは、病気の原因、緊急度、全身状態によって異なります。当院では、多診療科・多職種が連携し、患者さんにとって最善の治療となるよう、安全で質の高い医療を提供いたします。
不明な点や不安なことがあれば、遠慮なくスタッフへお声かけください。